読んでから観た『永遠の0』

映画『タイタニック』を観たのは、我が家のリビングだった。
公開時には「別にただの悲劇的なラブストーリーでしょ」という思いで、わざわざ観に行かなかった。
だけど、あとになってレンタルで観たその映画で私は何時間も号泣した。
長編映画なので、中盤からずっと泣いて泣いて泣き疲れたことを覚えている。


『永遠の0』は、原作を読んだ時点で号泣だった。
いわゆる、特攻隊員の悲劇の物語というか、戦争の悲惨さを描いた小説なので、それは悲しく切ない。
フィクションだとわかっていても、主人公である宮部が実在の人物のように錯覚してしまう。
死と向いあう若者たち、死んで行く大勢の人々、そして生き残った人間の複雑な思い。
どれをとっても涙なしには語れない、そう思ってしまうのは私が歳をとったせいだけかもしれないけど。


今回、映画化と聞いた時に「どんな出来であろうとも観てみたい」と思った。
もちろん、号泣する覚悟で。




原作の読後感想は去年の夏にコチラで書いているので割愛します → 



主演がV6の岡田くん、というのを知った時「あ、わりとありかも」と思ったのです。
イケメンすぎるけど、いわゆるチャラい感はないし、骨太なイメージだし。
宮部のストイックな性格も嫌味にならない程度の表現で、戦闘シーンでは思わず「かっこいい!」と心の中で叫んでしまいました。
この主役起用は当たりかも。
ストーリーテラーとしての孫役は三浦春馬くん、これも問題なし。
同行する姉の吹石一恵、二人の母親の風吹ジュン、お二人ともとても自然で良かったです。



原作では、孫である健太郎がもっとたくさんの戦友たちにインタビューするけれど、それをかなり割愛したのが良かったと思います。
もちろん、戦争当時の部分(宮部が登場するシーン)も大幅にカットしてありますが、コンパクトにまとめてもなお、その悲しみと苦しみはさほど薄まらなかったように感じました。
コンパクトにまとめたと言っても、原作がかなりの長編なので、映画も内容はずしりと重く濃いです。



宮部の思い出を語るのは、主に二人。
この二人が秀逸だったので、この映画が良くなったんじゃないかと思えるほどです。
一人は井崎役の橋爪功、もう一人は景浦役の田中泯
重要な役どころなのは原作も映画も同じですが、井崎の朴訥さと景浦のヤクザ業の対比が見事でした。
宮部の遺志を継いで残された妻と結婚した大石(つまり、健太郎の義理の祖父)を演じた夏八木勲も良かった。
全体的に生き残った老人たちが、ものすごくカッコよかったです。
あの戦争を生き残ったかたがた、きっと何か特別なものを抱いているのでしょう。
私たちには得られない何かを。
この物語を通して、私はそんなふうに感じました。



ラスト近くで景浦(現代の)が、健太郎とギュッと抱きしめるシーンは、原作で読んでいてわかっていたはずなのに感極まりました。
愛用のゼロ戦に乗って敵に突っ込んでゆく「カミカゼ」宮部に、更に号泣。
だって、享年26ですよ…。*1
切なすぎる…。



あっという間の144分でした。
チャンスがあればもう一度観たいくらい。
若い人たちにもぜひ観て欲しい映画です。
映画館に行くなら、ハンカチをお忘れなく!

*1:これが今の健太郎と同い年というところもミソ。