観て欲しいな『藁の楯』

連休中、色々と食べ歩いているため体重増加の兆し。
ぎゃあ!
今日もこれからお出かけなので、連休明けのグルメカテをお楽しみに。




大沢たかおファンとしては、見逃せない映画『藁の楯』を観てきました。
TVでの宣伝効果*1もあったのか、ほぼ満席で、男性も半分くらいいたのは嬉しい限り。


私としては、100点満点で90点つけたい映画でした。
ワーナーが配給してるってことでも注目ですが、俳優陣が豪華だし、カンヌ出品も納得の名作だと思います。
興奮のあまりほとんどネタバレしているので、以下たたみます。





メインキャストは大沢たかお松嶋菜々子藤原竜也、他にも山崎努伊武雅刀、岸谷五郎などそうそうたる顔ぶれ。
特に山崎さんは、こういう陰湿だけど激烈な役どころは似合いますね。



「この男を殺してください。御礼に10億円差し上げます」と新聞に大きな広告を出したのは、孫娘を殺された大富豪の蜷川(山崎努)。
犯人は幼女暴行連続殺人で逃亡を続けている清丸(藤原竜也)。
蜷川の広告のせいで、日本国民が10億円欲しさに清丸を殺しにかかる、という壮大なストーリーがメインです。



こうなったら自分の命があまりに危険にさらされるため、清丸は自ら出頭し逮捕される。
その場所が九州福岡だったので、東京まで護送するのにSPがつけられる。
それが大沢たかお演じる銘刈(めかり)と、松嶋菜々子演じる白石の二人。
他に警視庁からの刑事二人と福岡県警の刑事も同行し、清丸と護衛を合わせた6人での犯人移送が行われる。
果たして無事に清丸を東京まで送りとどけることができるのか?
藁の楯」の「藁」が犯人の清丸で、「楯」がSPたち、ということです。
「果たしてこのクズ野郎を生かして護送する価値があるのか?いっそのこと誰かに殺されたほうが世の中のためじゃないか?」という疑問を常に抱きながら観るアクションスリラー映画、125分。



125分があっという間、というくらいに目を離せない展開です。
人間のクズ、畜生以下、という設定の清丸を演じる藤原さんのふてぶてしさと狂気の匂いが怖い。
10億円をポンと出す、しかも途中で清丸を殺害しようと試みた人間にもサラリと1億円を出す蜷川も怖い。
でも、一番怖いのは、お金のために清丸を殺そうと思う人々の多さ。
病院の看護婦までが、治療とみせかけて死に至る薬物を注射しようとしたり、移送に使う飛行機の整備士が飛行機に細工したり、こうなると誰を信じていいのか、警察だって裏切るかもしれないという疑心暗鬼になる。



そんな中で、職務を全うしようとする5人。
最大限の護衛をつけての輸送は、ますます殺害を安易にするため、最終手段として極秘で民間人に紛れての護送となるが、残念ながら、5人のうちの誰かが裏切って蜷川に情報を流している。
情報をもらった蜷川が新たに刺客を放つ、イタチごっこ
5人の中には「こいつを殺してしまえば…」と考えてしまう人間もいたり…。



当然、仲間割れする護衛チーム、結局刑事が一人殉職*2し、もう一人(岸谷五郎演じる奥村刑事)が裏切っていることが判明する。
この奥村がどうやって外部と連絡を取っていたかというと、なんと手首に埋め込まれたマイクロチップによって位置情報を流していたという「ええええええ」っていうサプライズ。



護送トラックにニトロを積んだ大型ダンプカーが突っ込むシーン、新幹線の中で襲ってくる暴力団との派手な銃撃戦など、アクションも満載で飽きさせません。
神戸駅のホームで幼女を楯に「清丸を殺させろ」と騒ぐ男をやむをえず銃殺するという人情味あふれる福岡県警刑事を演じた伊武さんも印象的でした。
もちろん、大御所の山崎さんは言うまでもなく、最後の最後まで存在感ハンンパなかったです。



そしてほんのちょっとの油断から清丸に殺されてしまう白石。
男まさりのキリリとした白石、ときに感情的で女性らしさも持ち合わせてるこのSPを松嶋さんが繊細かつ大胆に演じてました。
私は松嶋さんのファンなので、とても切なかったです、まさか途中で殉職とは。



さてさて、本命の大沢さん演じる銘刈は、妊娠中の妻を飲酒運転によって亡くすという過去を持ち、それが根底に流れる「人間の心の強さと弱さ」につながっています。
SPという仕事に誇りを持ち、どんな状況にあっても冷静にかつ強硬に対象者を守り抜く銘刈、かっこいい!
途中、至近距離で胸に銃弾を浴び、まあ主役だから防弾チョッキによって死なないのですが、この時の見事な胸板も必見です、でへへ。



銘刈がときおり見せる切ない表情は亡くなった妻を思うのか、映画冒頭で仏前にお菓子を供えるシーンがあり、その時に銘刈の心に奥さんの声が聞こえるという細かいけれど重要な「前ふり」があります。
これがラスト近くになって、冷静新着な銘刈が白石を殺害した直後の清丸に向かって行くシーンに生きてくるのです。
「ああ、こういうことだったのか、そうなんだ、わぁあああああん!」って。
しかも、やっと東京に着いて蜷川とも対決し、最善の結末を迎えるはずが銘刈は隙をついて刃物を手にした清丸に…。



それにしても清丸のクズっぷり、死刑判決のあとで「何か言いたいことがありますか?」と尋ねられて「後悔し、反省しています。どうせ死刑になるなら、もっとやっておけばよかった」というセリフに唖然茫然でした。
反対に、ラストシーン、白石の残した小学生の男の子に優しい笑顔を向けて一緒に歩きだす長身の男性が…。



点数が90点なのは、護送体制があまりに幼稚な失態をしすぎの感があったから。
もうちょっとそこ気をつけようよ、ってところですね。
でもそれを補って余りあるストーリー展開と、出演者の熱演でした。
氷室ファンとしてはエンドロールで流れるテーマ曲にもシビれましたわ!
ぜひ観て欲しい今年のイチオシ映画です!

*1:『しゃべくり007』と『おしゃれイズム』での素顔が最高に素敵だった大沢さん。沈着冷静、頭脳明晰、清潔感満載、なのび天然ボケってとこもいいですねえ。

*2:この熱血刑事が瑛太の弟だと、さっき「藁の楯wikiで知りました。へぇええええ。